生成AIをビジネス利用する際の著作権侵害リスクについて

この記事を書いた人
北爪 聖也

株式会社pipon代表取締役。 キャリアはADK(広告代理店)でテレビ広告運用をして残業120時間するが、ネット広告では自分の業務がAIで自動化されていることに驚愕する。そこで、機械学習受託会社に転職し、技術力を身につけた後、piponを創業。現在、製薬業界、大手監査法人、EC業界、様々な業界でAI受託開発事業を運営。

Reutersは、2022年12月〜2023年1月の2ヶ月でChatGPTは1億ユーザを獲得したと報道しました。

今注目を集めているChatGPTを代表とする生成AIをビジネスにも活用できないかと各社試行錯誤が続いています。しかし、生成AIをビジネスに活用する際の問題として著作権侵害のリスクが特に日本国内であげられています。

どういったケースで著作権の侵害になる可能性があるのか事例を見ながら解説していきたいと思います。

目次

  1. 生成AIとは?簡単におさらい
  2. 代表的な生成AIを用いたサービスとは
  3. 著作権について簡単なまとめ
  4. 国内で生成AIの利用が著作権侵害にあたるリスクについて
  5. 海外で生成AI利用が著作権侵害にあたると訴訟されているケース

生成AIとは?簡単におさらい

生成AI(ジュネレーティブAI)は、言語や画像や音声等の大量のデータから、機械自らが深層学習と呼ばれるパターン分けを行い自ら学習をすることを通じて、新たな言語、画像、音声などを作り出すことができるモデルやアルゴリズムの総称です。従来のAIとは異なり、生成AIはAI自ら学習を重ね、オリジナルのコンテンツを生み出していくことが特徴です。

代表的な生成AIを用いたサービスとは

2023年11月時点でローンチされている代表的なサービスについてご紹介致します。

ChatGPT

ChatGPTは、無料で使用できるAIチャットサービスです。海外はもちろん国内でも普及しつつあり、最も知名度のある生成AIといえます。

ChatGPTは、大規模言語モデル(LLM)と呼ばれるAIを使用し、自然な文章を創り上げます。プログラミング言語を使ってコードの生成もできますし、質疑応答機能も優秀で専門家のような回答が提供されています。

Midjourney

Midjourneyは、テキストの説明文をもとに画像を制作するサービスです。独自の人工知能プログラムを搭載しており、テキストを入力するとキーワードや文章に適したイラストや画像を生成してくれます。

著作権について簡単なまとめ

ここで著作権の基本についておさらいしましょう。

著作権の基本的な概念

公益社団法人著作権情報センターによると、著作権とは、

「著作物」を創作した者(「著作者」)に与えられる、自分が創作した著作物を無断でコピーされたり、インターネットで利用されない権利です。他人がその著作物を利用したいといってきたときは、権利が制限されているいくつかの場合を除き、条件をつけて利用を許可したり拒否したりできる

https://www.cric.or.jp/qa/hajime/index.html

とあります。

著作権侵害にあたる事例

イラストに関する著作権侵害が論点になった最近の事例(2019年)として、親子パンダのイラストを作成した作者が、非常によく似たイラストを製品包装の表示にしたとして、著作権侵害にあたるとされた事例があります。イラスト構成の類似性、ならびに表現上の本質的な特徴が同一であったことなどが著作権侵害にあたる根拠となりました。他人の著作物の「表現上の本質的な特徴を直接感得できること」がある表現には十分に注意する必要がありそうです。

※判決内容や事件詳細はこちら(https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/3750)等をご参照ください。

国内で生成AIの利用が著作権侵害にあたるリスクについて

文化庁が公表している「A I と著作権」の中で、

AIを利用して画像等を生成した場合でも、著作権侵害となるか否かは、人がAIを利用せず絵を描いた場合などの、通常の場合と同様に判断されます

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf

と記載がありました。

ただし、生成AIができるように著作物を学習させ、モデルを開発する段階と、生成AIが実際に何らかのアウトプットを生成する段階、またはこれなどを利用する段階に分けて論じていることには留意が必要です。日本の著作権法の構成によって、日本は生成AI天国、AI学習天国などと表現されることもありますが、それは前者の開発段階について法律が広く著作物の利用を認めているためです。

一方、後者の段階では、生成AIであっても著作権侵害の判断軸はこれまでと変わりません。生成AIによって創出された文書、画像などを公表する際に、他人の著作物の「表現上の本質的な特徴」が直接感じ取れるか(類似性の観点)、そしてそれが既存の著作物に基づき自己の創出作品の中に用いているか(依拠性の観点)を確認しましょう。これらが認められる場合は、生成AIを用いた文書等であっても著作権侵害に当たる可能性があるので注意が必要そうです。

海外で生成AI開発・利用が著作権侵害にあたるとして訴訟が提起されているケース

米国在住のライター/デザイナー/プログラマー兼弁護士のMatthew Butterick氏が2022年11月、Stability AI・Midjourney・DeviantArt社の3社を訴訟しました。上述のようにStability AI・Midjourneyのいずれも画像生成AIとしてのサービスを提供しています。

原告側の訴えによれば、これらの画像生成AIは世界中で数百万人ものアーティストが描いた数十億枚もの各種画像をウェブ上から収集し、これを機械学習の教材(「教師用データ」あるいは「学習用データ」などと呼ばれる)として無断で使用しています。これらAIが生成する作品はアーティストの著作権を侵害すると同時に、アート市場での新たな競合関係を作り出すことによって、アーティスト(つまり人間)を市場から締め出していると主張しています。

判決は、2023年10月現在では出ていないですが、注目が集まる裁判の一つです。この他にも米国を中心に、生成AIの開発や利用について、プログラマーやミュージシャン、コメディアン、画像コンテンツ管理会社など、創作性の高い作品を生み出し、管理するステークホルダーからの訴訟提起が続いています。

結論

国内で生成AIを利用する際は、従来通り著作権を意識しながら創作活動をすることが重要だと思われます。一方、米国を中心とした生成AI関連の訴訟の結果によっては国内での議論に関しても影響を受ける可能性があり、海外の事例を逐次確認することも重要と思われます。

引用・参考資料

監修

法律事務所ZeLo・外国法共同事業 結城 東輝様

 

法律事務所ZeLo・外国法共同事業公式サイトはこちら