チャットボットは使い物にならない?なぜ失敗するのかを徹底解説

この記事を書いた人
北爪 聖也

株式会社pipon代表取締役。 キャリアはADK(広告代理店)でテレビ広告運用をして残業120時間するが、ネット広告では自分の業務がAIで自動化されていることに驚愕する。そこで、機械学習受託会社に転職し、技術力を身につけた後、piponを創業。現在、製薬業界、大手監査法人、EC業界、様々な業界でAI受託開発事業を運営。

はじめに

ユーザーがウェブサイトから必要な情報を効率的に得られるよう、チャットボットを導入しているサイトもありますが、中には回答の精度があまりよくないチャットボットも見られます。せっかくチャットボットを採用しても、精度の良い回答を返せないのでは、ユーザーが離れてしまう恐れがあります。
今回は、ユーザーの期待に応えるため、どうすればチャットボットの導入を成功させられるかを見ていきたいと思います。

チャットボットとは

チャットボットとは、人間が入力するテキストや音声を通じて、会話を自動的に行うプログラムのことです。ウェブサイトにチャットボットを導入することで、検索の効率化、コスト削減、ユーザー満足度の向上といった効果が期待できます。
しかし、ユーザーが必要とする情報が得られなければ、つまりチャットボットの回答精度が低ければ、ユーザーの満足度は下がり、ユーザーは他のウェブサイトへ移ってしまう可能性があります。

チャットボットが失敗する原因

チャットボットが、狙い通りの性能を発揮できずに失敗してしまう理由を考えてみましょう。

1) ユーザーとのやり取りの能力が低い(回答精度が低い)

チャットボットに求めらるのは、これまで人が行なっていた業務を代わりに行うことです。具体的には、ユーザーの質問に対して人が対応するのではなく、チャットボットが回答するといったことです。そのためには、ユーザーからの質問に対して適切な回答を返す能力が求められます。
しかし、この能力が低いと、いくらユーザーが色々と問い合わせてもピント外れの回答ばかりが返ってくることになり、ユーザーの不満が高まることになります。これまで人間が対応してきたことを、チャットボットにすべて任せるのは不可能ですが、最低限の回答精度を持たせなければ、使い物にならないチャットボットとなってしまいます。
回答精度の低さは、チャットボットに学習させている(登録している)データの量が少なすぎることが、原因の一つと言えます。
チャットボットには色々なタイプがありますが、ログ型や辞書型と言った機械学習型のチャットボットでは、チャットボットにこれまで記録されている会話内容を学習させる、事前にキーワードと回答の組み合わせを辞書に登録しておく、といったことが必要となります。
しかし、この情報量が少なすぎると、ユーザーからの質問に対して、チャットボットは適切な回答を返すことができません。よって、ユーザーからの問い合わせ内容を想定し、それに十分応えられる量の情報量をチャットボットに持たせておく必要があります。

2) イレギュラーな質問に対する対策がない

選択肢型のようなルールベース型のチャットボットであれば、ユーザーは決められた選択肢から質問を選ぶことになるので、すべての質問に対して回答を用意しておけば対応できます。
しかし、ユーザーが自由に質問を入力するタイプのチャットボットでは、設計側が想定していないイレギュラーな質問が入力されることもあり得ます。
このとき、速やかに個別の問い合わせフォームに誘導する、などができれば問題ないのですが、意味不明な回答を返したり、何も回答できずに停止してしまったりしたら、ユーザーの満足度は低下するでしょう。

3) チャットボットの守備範囲が広すぎる

あらゆる質問をチャットボットで対応しようと、チャットボットに過剰な能力や機能を与えてしまうことがあります。
しかし、スペックの高いチャットボットを使いこなすためには、1)でも述べたように、膨大なデータを学習させたり登録したりする必要が出てくるため、コスト面や工数面で大きな負担となります。
チャットボットで対応する範囲を狭めることで、簡単なルールベース型のチャットボットで事足りるかもしれません。ルールベース型であれば、機械学習型のように精度を高めるための追加学習が必要ないので、導入まで 時間もコストもかからず、トラブルも起こりにくくなります。

チャットボットの導入を成功に導くためのポイント

さて、前項でチャットボットが上手くいかない原因を見てきましたので、チャットボットの導入で成果を上げるにはどうすればよいか、を見ていきたいと思います。

1) チャットボットの導入を目的としないこと

チャットボットを導入するにあたり、チャットボットで何をしたいのかを、よく考えましょう。ひょっとしたら、その目的を実現するには、チャットボットである必要はないかもしれません。
当初は、ユーザーの問い合わせに対して、いつでも迅速に回答できるようにする、という目的が、いつの間にか、チャットボットを導入するのように、手段が目的になっていませんか?
目的を実現するために必要な機能をよく検討し、チャットボットがその機能を有しているのかを吟味してください。

2) 導入前に調査をしっかり行うこと

ウェブサイトであれば、訪問者からの過去の問い合わせが、色々あるのではないでしょうか。チャットボットの導入にあたり、まずはこれまでどのような問い合わせがあり、どのように回答しているのかを、よく調査するとよいです。
ユーザーからの問い合わせをゼロから考えて、それに対する回答を考えるのは、大きく的を外し、無駄なチャットボットになってしまう可能性があります。
せっかく、過去の実績があるのであれば、まずはそれを解析することで、どんな機能やどの程度の回答精度が必要であるかを、絞ることができます。

3) チャットボットの仕様(要件)を明確にすること

さて、目的を明確にして事前の調査を行ったら、チャットボットの仕様をしっかり決める必要があります。機械学習型にするのかルールベース型にするのか?機械学習型であれば、どんなデータをどれくらい学習させるのか?ルールベース型であれば、どんなフローにするのか?イレギュラーな質問が入力されたときは、どう対応するのか?など、事前に決めておくべき仕様は色々とあります。
導入するチャットボットの仕様を、事前にできるだけ具体的に明確にすることで、当初の目的を実現できるか、検討に漏れがないか、などを把握することができます。

おわりに

ウェブサイトにチャットボットがあると、見栄えはよいですが、ユーザーが必要とする情報が得られなければ、ユーザーは離れてしまい、サイトの単なる飾りになりかねません。
そうならないようにするためには、チャットボットの導入前にしっかり準備しておく必要があります。
特に製薬会社様のサイトであれば、ユーザーからは非常に高度な問い合わせが多いかと思います。チャットボットを導入すれば、ばらつきなく正確な回答を返すことが可能ですので、ユーザーの満足度向上につながることが期待できます。
事前によく検討を重ねて、是非チャットボットの導入を成功させてください。

参考サイト

チャットボットでFAQ解決率を高める3つの方法や主なサービス

チャットボット導入は失敗する?│失敗事例・原因・成功のポイント|トラムシステム

チャットbotを導入して、「社内ヘルプデスクの電話対応」をやめてみた結果