医薬業界のデータ解析

ファイザーのDX戦略を解説

はじめに

今回は、米国の製薬大手であるファイザーが推進するDX戦略を解説します。
国内外問わず、製薬業界においてデジタル技術を使った各種ソリューションの開発や、人工知能(AI)創薬への取り組みなど、デジタル競争が激化しています。
世界製薬大手のファイザーも、ビッグデータやデジタル技術を活用したさまざまな取り組みを行い、デジタル競争時代を勝ち抜こうとしています。今回は、ファイザーで推進しているDXの取り組みを見ていきます。

ファイザーにおけるDX推進の取り組みについて

1) 先駆的なDXの取り組み

デジタル技術は、ヘルスケアを他の産業と同じのような対象物に変換する可能性を持っています。その可能性の中、ファイザーでは患者によりよいサービスを提供できるよう、さまざまな新しいソリューションを開発、リリースしています。例えば、慢性疾患に悩む患者向けに、補助ロボット「Mabu」を開発しています。Mabuは患者の症状を把握したり、処方薬に関する患者からの質問に答えたり、リアルタイムで患者の状況にあわせた薬を提案してくれたりします。また、患者は症状についてMabuフィードバックを得られるので、症状の現状を把握することができます。
さらに、ファイザーはがん患者向けに「LIVINGWITH」というアプリを発表しています。LIVINGWITHは日々の症状を管理したり、介護者と症状の最新状況を共有したり、医療関係者とのコミュニケーションをよりよいものに変えることを可能にします。
また、ファイザーではビッグデータ、機械学習、AIも積極的に活用しており、診断や治療の改善につなげることを目指しています。
このようにファイザーでは、デジタル技術は、医薬品の候補となる化合物の発見から、製造、流通に至るまで、医薬品開発において重要な役割を果たすと認識しており、患者の生活をよりよいものに変革すべく、デジタル技術の可能性をフルに活用して常に新たなソリューションの開発を進めています。

2) リアルワールドデータ(RWD)の積極的な活用

ファイザーでは、女性の転移性乳がん患者向けに、Ibranceという医薬品を展開しています。このたび、Ibranceを男性の転移性乳がん患者に適用することに対し、米国食品医薬品局(FDA)に承認されました。承認にあたっては、女性患者を対象としたランダム化比較試験の有効性データを基本としつつも、男性患者のRWDが含まれた補助資料で審査が進められました。
男性乳がんの患者数は女性のわずか1%程度ということもあり、治療法に関する試験や研究が進んでいません。そこでファイザーはこの申請にあたり、Flatiron Health 社と共同で市販後のレポート、Flatiron社の乳がんデータベース、IQVIA社の電子データ、ファイザーのグローバル安全性データベースなどのRWDを調査し、男性の乳がん患者にもIbranceが有効であることをFDAに主張し、ついに承認されたのです。

3) チャットボットの開発

製薬会社のウェブサイトでは、医薬品に関する問い合わせに対し、チャットボットで情報を提供する例がよく見られます。ファイザーでは2018年より順次、米国で「Medibot」、ブラジルで「Fabi」、日本で「マイボ」という、3つの医療情報チャットボットを立ち上げました。ファイザーは世界中で多くの製品を発売しており、医療関係者、患者、介護者から多くの質問が寄せられます。このチャットボットを使うことで、多様な問い合わせに対して迅速に、正確に、分かりやすい回答を利用者に提供することができます。
チャットボットシステムを作るにあたっては、自然言語処理のアルゴリズムを使っています。具体的には、電話での問い合わせの音声データを解析して学習モデルを作っただけでなく、地元の言語コンサルタントにもモデルの訓練を依頼し、利用者がより親しみを感じることができるチャットボットを作り上げました。

4) デジタル技術を使った創薬の推進

ファイザーでは医薬品開発のプロセスにおいて、患者の症状をより深く理解するために、
臨床データだけでなくリアルワールドデータも使っています。また、既存のデータを有効活用して時間やコストを抑えつつ、新規のデータを得られるよう、試験を企画する際に生物統計モデルを適用しています。
そして、臨床試験データシステムを統合し、意思決定を強化するためにAIを活用するなどして、繰り返し行われるプロセスを自動化しています。
さらに、臨床試験でウェアラブルデバイスを使うことで、患者が臨床試験に参加しやすくなるだけでなく、正確なデータをもれなく収集することが可能となります。2019年に開始された臨床試験のうち、半数以上で何らかのデジタル要素を含んでいたとのことで、今後も臨床試験でさまざまなデジタル技術が使われることが予想できます。

5) ドローン技術の活用支援

ドローン技術を用いたさまざまな商品の配達は、商業的な目的から人道的な目的に至るまで、幅広い範囲で活用されています。ファイザーは、医療サービスの行き届いていない地域の人々に、医薬品やワクチンを迅速に配達する活動を支援しています。例えば、2019年4月に、ドローンによる配達サービスを提供するZipline社などの企業と共同事業契約を結び、ガーナの農村地域でドローン配達を展開するための、インフラ整備を支援しています。これにより、ガーナの国全体で1200万人の患者が、治療に必要な医薬品を容易に入手可能となることが期待できます。
この配達サービスは、約150種類のワクチン、血液製剤、医薬品を約2000の医療機関に提供できます。これにより、医療関係者は必要な医薬品を入手するために、国中を走り回る無駄な時間を削減できます。そして、その時間を患者と過ごす時間に割くことができ、患者が必要とする治療を施すことができるのです。

6) 自動化時代における患者の安全確保の取り組み

ファイザーの業容拡大やテクノロジーの進化に伴い、安全に関する問題が増えています。そこで、最高レベルの品質とコンプライアンスを維持しつつ、これらの問題を自動で対処できるよう、AI技術の活用に焦点を当てた活動を開始しました。製品群と患者数の増加に対応するため、自動化により有害事象や安全性評価に対する活動を効率的、かつ、最適化することで、従業員の工数を削減し、ファーマコビジランスの新しい未来を作り上げていくとのことです。

おわりに

今回は、ファイザーのDX戦略を紹介しました。ファイザーは製薬業界におけるデジタル化競争を勝ち抜くため、広い範囲でデジタル技術の導入を推進しています。グローバルで製薬大手であるファイザーの取り組みは、全く新しいソリューションの提供につながる可能性があり、その動向が大いに注目されます。

参考サイト

Win the digital race in pharma

Enhancing Patient Care Through Digital Transformation

Digital Transformation Stories: How Pfizer and Halifax Health Foster Innovations in Healthcare

AARP, Pfizer, UnitedHealthcare team up to research digital health usability for older consumers

ABOUT ME
北爪 聖也
ダメ営業マンからデータサイエンティストへキャリアチェンジ。 技術とビジネスサイドの橋渡しが出来るため、ダメ営業マンの経験も役に立ちました。 広告代理店ADKにて3年勤務→データ分析受託の会社DATUM STUDIOにて1.2年勤務後、独立。
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