はじめに
今回は、ダッシュボード系のOSS(オープンソースソフトウェア)を見ていきます。
近年、組織の中に大量に存在するデータをうまく活用し、ビジネスの意思決定につなげることを期待して、様々なBIツールが使われています。
BIツールの中で重要な機能の一つが、「ダッシュボード」と呼ばれるものです。ダッシュボードにも様々なものがありますが、今回はダッシュボード系のOSSである「Redash」と「Metabase」を紹介していきます。
ダッシュボードについて
1) ダッシュボードとは
「ダッシュボード」とは、様々なデータを統合して一目でデータを把握できるように見える化するツールのことです。
ダッシュボードとはもともと、自動車や飛行機などの操作に必要な、計器類を搭載したボードのことです。
自動車のダッシュボードには、スピードメーター、タコメーター、ガソリン残量など、様々な情報が一目で分かるようになっていることは、ご存知のことかと思います。そこから様々な情報を見える化するツールの意味として、見える化のツールに「ダッシュボード」という言葉が使われるようになりました。
ビジネスの世界では、ダッシュボードtypeおは企業の売上やマーケティング関連のデータなどを集め、グラフなどで見える化するツールを意味しています。
最近、組織が保有している大量のデータの活用を狙ったBIツールの導入が進んでいますが、ダッシュボードはこのBIツールの機能の一つです。BIツールで様々なデータを分析して、その結果をダッシュボードによって見える化することで、意思決定につなげることが可能となります。
2) ダッシュボードの特徴
次に、ダッシュボードの特徴を見ていきましょう。ダッシュボードには、大きく2つの機能があると言えます。
①自動車や飛行機のメーターのように、速度などの様々な情報を直感的に把握しやすく表すことです。たとえば自動車のエンジンの回転数を示すタコメーターであれば、デジタルのメーターであったり、アナログの針が動くメーターであったりしますが、ある回転数以上はレッドゾーンと呼ばれ赤色で示されています。レッドゾーンとは、これ以上エンジンを回すとエンジンにとってよくないですよ、という領域を示すのですが、このようにインパクトのある赤色で示されていると、ドライバーは一目で危険な範囲を把握できます。
②データ解析の目的やニーズに応じて、別の情報を追加したり、あるデータを更に深く分析したりできます。自動車のダッシュボードでは、メーターを新たに追加することは難しいですが、BIツールのダッシュボードでは自由に分析したいデータを選び、興味のあるグラフを好きなように並べ、そのデータを深掘りできる機能を備えているのが一般的です。
3. ダッシュボード系のOSSの紹介
それでは、実際のダッシュボードを見ていきましょう。今回は、「redash」と「Metabase」に絞って紹介します。
1) Redashの紹介
Redashは、オープンソースで提供されているダッシュボード作成ツールで、Webブラウザ上で操作できます(ChromeまたはFirefoxを推奨)。対応しているデータベースは、BigQuery、MySQL、Arm Treasure Dataなどの主要なものをカバーしているだけでなく、Google Analytics、Spreadsheetsなどのデータも扱うことができます。これらのデータソースをダイレクトに読み込むことができるのは、大変便利ですね。
さて、Redashは以下の流れで容易に使うことができます。
① BigQueryなど、見える化したいデータが入っているデータソースを選ぶ
② クエリを記述する
読み込んだデータベースから見える化する対象を、SQLを使ったクエリで記述します。
③ データを見える化する
Redashには、データを見える化するツールが多数用意されています。具体的には、箱ひげ図や棒グラフなど各種グラフ、カウンターやピボットテーブルたど数値を整理するチャートなどが、デフォルトで準備されています。
この豊富なツールを使って、データ分析の目的に合わせてデータを見える化します。
④ ダッシュボードを作る
見える化した複数のグラフを組み合わせて、好みのレイアウトに配置します。
Redashの主な強みは、
・多くのデータソースに対応している
・データの自動更新のスケジュールを設定できる
・ダッシュボードを閲覧できるユーザーは管理者のみが招待できるため、機密性の高い情報が漏れにくいしくみになっている
・レスポンスが早い
気を付けたい点は、クエリの記述にSQLの知識が必要なため、何も知らない人がすぐに使えるというツールではないことです。
2) Metabaseの紹介
MetabaseもRedashと同じく、オープンソースで提供されているダッシュボード作成ツールです。
MetabaseもRedashと同じように、簡単に使うことができます。
①必要なファイルをインストールする
Metabaseは初めにファイルのインストールが必要となります。「Running the Metabase Jar File」、
「Running Metabase on Docker」、「Running the Metabase Mac App」の3つから選択することになりますが、Javaが入っていればすぐに使える「Running the Metabase Jar File」がおすすめです。
②データソースから見える化したいデータを読み込む
Metabaseも多くのデータソースに対応していますが、Redashより対応しているデータソースは少ないですが、それでも、BigQuery、MySQL、Google Analyticsといった、主要なデータベースには対応しているので、不満はないと思います。
③ データを見える化する
Metabaseは、簡単なグラフであればSQL文を書かなくても、プルダウンリストから選んでいくことで、簡単に深掘りすることができます。複雑な条件を入れたいときなどは、SQLでクエリを作成する必要がありますが、SQLに詳しくない人にとっては、これは大変助かる仕様です。
見える化のツールは、折れ線グラフ、棒グラフ、散布図などのグラフや、ピボットテーブル、カウンターなどのチャートが準備されています。
データに対して、適用するのに相応しくないツールは、自動でグレーアウトしてくれるので、ツール選択の参考になります。
④ダッシュボードを作る
③で作成したグラフをまとめて見えるようにするために、ダッシュボードを作ります。各々作成したグラフはカードとして表示され、サイズを変えたり、好きな場所に動かしたりできます。作成したグラフやダッシュボードにはURLが付与されるので、電子メールやチャットにそのURLを貼り付ければ、他の人と共有することができます。ただし、同じMetabaseのアカウントを持っている必要があります。
Metabaseの主な強みは、
・導入が難しくない
・簡単な処理であれば、SQLなしで見える化ができる
・グラフやダッシュボードの見た目がよい
気を付けたい点は、対応しているデータベースがRedashほど充実していないため、Metabaseを使いたかったのに、データを蓄積しているデータベースが対応していなかった、ということが起こり得ることです。
これからデータベースにデータを蓄積してMetabseで見える化したい、と言うのであれば、Metabaseに対応したデータベースを選定してください。
おわりに
今回は、ダッシュボード系のOSSのうち、RedashとMetabeseに絞って紹介しました。Redashは様々なデータベースに対応している点が強みであり、Metabeseは操作が容易で見た目が良い点が強みです。
データは蓄積しているだけでは、何の価値も生みだしません。データからいかに有益な情報を汲み取り、それをビジネスに活かすかが求められます。
データから情報を汲み取るには、機械学習のような高度な方法もありますが、まずはグラフ化して数値を見ることが基本となります。
ダッシュボードは様々なグラフを並べて、俯瞰して見ることができるので、次のアクションに繋げるために役立つツールと言えるでしょう。
いきなり高いお金を払って、オリジナルのダッシュボードを作るのではなく、まずは、今回紹介したツールを低コストで導入し、必要に応じてオーダーメイドでオリジナルのソフトに移行していく方法も、よいのではないかと思います。
参考サイト
なぜ分析ツールのUIを「ダッシュボード」と呼ぶのか?
ダッシュボードとは?データの可視化に役立つツール14選
ダッシュボードツール「Re:dash」とは?インストール方法から使い方まで解説!【初級編】
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