グラクソ・スミスクラインのDX戦略を解説

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北爪 聖也

株式会社pipon代表取締役。 キャリアはADK(広告代理店)でテレビ広告運用をして残業120時間するが、ネット広告では自分の業務がAIで自動化されていることに驚愕する。そこで、機械学習受託会社に転職し、技術力を身につけた後、piponを創業。現在、製薬業界、大手監査法人、EC業界、様々な業界でAI受託開発事業を運営。

はじめに

大手製薬企業であるグラクソ・スミスクライン(GSK)は、市場投入のスピードアップ、製品の改善、顧客体験の向上のために、デジタル技術を徹底的に活用している企業の一つです。

グラクソ・スミスクラインにおけるDX推進の取り組みについて

1) ビッグデータの活用

GSKは長い間、創薬の改善と開発期間の短縮のためにビッグデータを活用してきました。

GSKはCloudera Hadoop上にアナリティクスプラットフォームを構築しましたが、スタックにはKafkaやSparkのほか、複数のベンダーのテクノロジーも含まれています。 ClouderaのパートナーであるStreamSetsはデータインジェスト技術を提供し、Tamrは機械学習データのキュレーションを提供しています。また、GSKはAtScaleの仮想化技術とZoomdataをデータの可視化に利用しています。

最近、GSKはClouderaのアナリティクス技術をGSK R&D Information Platformに統合しました。導入後、同社は複数の臨床試験にまたがるデータの収集と分析にかかる時間を数ヶ月から数分に短縮しました。GSKは、研究開発の効率化と処理の高速化により、市場投入までの時間を短縮し、新薬やワクチンをより迅速かつ低コストで市場に投入して患者さんを救うことができると期待していると、同社の関係者は述べています。

「私たちは様々な臨床試験で得られた知見を活用することで、単一の治療領域や複数の治療領域の全体的な方程式について異なる視点を得ることができます。これは、患者さんの生活をより良いものにし、薬を発見するためのさまざまな道筋につながるものです」とGSKのビッグデータソリューション担当ディレクター、Ranjith Raghunathは述べています。

GSKは7月、創薬と市場投入までのスピードを向上させるための継続的な戦略の一環として、計算薬物設計の専門家であるキム・ブランソン博士を人工知能と機械学習のグローバル責任者に任命しました。ブランソン氏は新たな役割として、AIを利用して潜在的な医薬品の新規ターゲットを特定するプロジェクトを監督することになります。

2) ブロックチェーン

さらにGSKもIBMなどに加わり、サプライチェーン管理の改善を目的としたブロックチェーンネットワークを形成しています。

Trust Your Supplierと呼ばれる新しいブロックチェーンネットワークは、ブロックチェーン専門企業のChainyardがIBMのブロックチェーンプラットフォームを使用して構築しています。

サプライチェーン管理は、ブロックチェーン技術の恩恵を受ける有望な分野の1つです。ブロックチェーン上に構築された分散型のアプローチと不変の監査証跡を使用することで、ネットワークは手動で時間を要するプロセスを排除し、不正やエラーのリスクを軽減するのに役立つだろうと同社は述べています。

IBM Blockchainのジェネラル・マネージャーであるMarie Wieck氏は、ブロックチェーンをベースとしたサプライチェーン・プロセスは、新規サプライヤーの採用にかかる時間を70~80%短縮し、管理コストを50%削減できる可能性があると述べました。

GSKのエマ・ウォルムズリーCEOはブルームバーグの取材に対し、「どの企業でも業績を変える最もインパクトのある方法は、スケジュールを短くし、コストを下げ、成功の確率を高めることだ」とコメントしています。

おわりに

今回はGSKのDX戦略を紹介しました。GSKは古くからビッグデータの活用に取り組み、さらにブロックチェーンへと展開しています。今後の動向が期待されます。

参考サイト

研究開発|GSK グラクソ・スミスクライン株式会社

Digital transformation at GlaxoSmithKline: analytics, AI and blockchain